コロナ禍における音楽療法を通して

私はフリーランスの音楽療法士として精神科病院や高齢者施設等で仕事をしています。新型コロナウイルスの流行は音楽療法の活動にも大きな影響がありました。私の場合、緊急事態宣言後、音楽療法がお休みになった施設もありました(ほとんどが6月から再開しています)。音楽療法の継続や中止の判断は各施設により異なりましたが、どの判断もまだよく解明されていない未知のウイルスに対して納得できるものでした。

新型コロナウイルスが飛沫感染することや、合唱団や昼カラでのクラスター発生のニュースもあり、音楽療法を継続した施設では、「歌う活動」から「歌わない活動」を中心とした活動展開へ変更しました。活動を一緒に行う他の職種の方々と充分な感染対策を話し合い、参加者にとって少しでも良い時間になるよう模索しながらの活動実施でした。その一つの例として、今までは「歌いたい歌ありますか」のような声かけが多かったのが、「聴きたい曲ありますか」と言う声かけを行いましたが、普段リクエストされない方もリクエストされたり、洋楽やクラシック等の曲名が聞かれたりもしました。ご自分のリクエストを取り上げられたことに対して満面の笑みで喜ばれる方、曲にまつわるエピソードを話される方、何度も「ありがとう」と話される方、様々な反応がありました。

また、普段大きな声で歌うことが当たり前となっていたグループでは、日ごとに「早く歌いたい」「思いっきり歌えないとスッキリしない」等の声も聞かれ、歌えない状況を通して、歌うことの効用について参加者自身が感じているような発言も聞かれました(6月中旬より歌うことが解禁されています。ソーシャルディスタンスを保ち、さらに通所のため皆さんご自宅から持参のマスク着用で歌っています)。

昨今いろいろな場面でオンラインが積極的に活用されるようになり、音楽療法士の中には、オンラインでの音楽療法セッションを開始した方もいます。私自身はオンラインでの音楽療法はまだ行っていませんが、オンラインの普及により家に居ながら研修会に参加出来ることで、コロナ流行前に比べ、学びの時間がとても増えました。

新型コロナウイルスの1日も早い収束を願っていますが、新型コロナウイルスによって新たに得られた知見も活かしつつ、さらにパーソン・センタードな関わりについて模索して行きたいです。

(パーソン・センタード・ケアを学ぶ音楽療法士)

Follow me!